もう一度抑えたい!EC専業アパレルが赤字にならないために採るべきMD戦略

SPA型ネット専業アパレルが抱える、一極集中経営のリスク

2015年2月、各種メディアにてECアパレルの夢展望が業績悪化を理由に健康コーポレーションの子会社になると報じられました。夢展望は、自社で企画する低価格帯ギャル向けアパレル商材を中国で生産しネットを中心に展開、価格戦略とモバイル中心の広告展開で若年層からの支持を受け業績を伸ばし13年にマザーズへ上場しました。しかし14年にはトレンドの変化や材料費の高騰により業績悪化へと一点、15年2月には健康コーポレーション株式会社に対して第三者割当増資を実施すると発表しました。

営業利益率の低さはかねてより指摘されていましたが、夢展望が業績を落とした原因やコスト構造を理解しているネットショップ担当者の方はどのくらいいるでしょうか?

また、近年長引く景気停滞と大手ファストファッションの台頭から、利益を創出し難いコスト構造になっているEC専業アパレル企業は少なくないと思います。

製造拠点を中国に一極集中するリスク

売上に占める経費と営業利益の割合

 

この図は、売上に対する「販管費」「原価」「営業利益」の割合を表した図です(14年9月期から算出)。ネットショップ事業を展開する企業2社と夢展望社を比較してみました。

Aは、『メーカー型』自社で商品を企画・生産しているモデル

Bは、『小売り型モデル』商品を仕入れて売るモデル

Cは、『夢展望』14年9月期の業績です

夢展望は商品を自社で企画し中国などの工場で製造しているのでAタイプと同様ですが、夢展望社の原価率は60%と驚異的に突出しています。

同社の原価率は、2012年時点(9月期)では48.9%、2013年では51.2%、2014年で60.7%と上昇傾向として表れていましたが、その中でも2013年から14年の上がり幅が目立ちます。

夢展望の原価率が上昇した原因は、

1.中国現地の人件費

中国の人件費は過去10年間で見ると3倍以上に跳ね上がっており(日中経済協会調べ)、そのため外注加工費が上昇し原価率を押し上げる要因になりました。

2.円安による原材料の高騰

中国の工場と直接取引で仕入れを行っていたため、円安の影響で原材料が高騰し急激にコストが増えました。

3.過剰在庫

同店舗のヒット商品をまだ売れると見通して大量に製造しますが、トレンドの変化から販売が鈍り在庫を消化できなくなりました。その結果、在庫商品の処分損失※1として150百万円を売上原価として計上。

と言われていますが、これは夢展望だけに限った話ではなく、海外に製造拠点を持つ低価格帯SPA企業、特に中小規模のメーカーが直面している課題ともいえます。

その原価高騰の要因を少し掘り下げて考えてみます。

踏み切れないチャイナ・プラスワン戦略

夢展望社の原価急騰の理由1と2は、製造拠点を中国に集中し過ぎたことで引き起こされたと言えます。数年前より中国における内政問題、バブルの懸念、日本との外交問題、人件費の上昇など様々なリスクが指摘されており、中国以外に生産拠点を持ち分散投資する「チャイナ・プラスワン戦略」の重要性は日本でも説かれていました。

日本ではユニクロや伊藤忠商事など大企業による工場分散化は進められていますが、全体の割合としては日本の半数の企業が中国にしか工場を有していません。2013年に帝国データバンクが出したデータによると、中国へ進出している日本企業21,266社が海外何ヶ国に拠点を持つかについての調査結果で、中国のみの企業が49.4%と約半数、中国以外にも拠点を持つ企業も50.6%、中国+1拠点の企業は21.8%にとどまっていますが、中国に加え1~3拠点を持つ企業は40.8%と報告されており、チャイナプラスワン戦略を実行できていない企業はまだ半数近く存在しているのです。

製造拠点を移せない理由として既存ブランドの品質維持の難しさが挙げられます。アパレル商材を扱う企業の場合、商品やブランドの品質は、それを発注する工場の技術や職人に大きく依存してしまうため、既存ブランドの品質を維持したまま工場を変えるのは容易ではありません。製造拠点を変え、新たな環境下で生産管理を行うとなると、工場側とイチから関係性を構築しながら、原材料や部品の調達ルートも新たに開拓し、現地職人を育成しながら商品を製造するため、不良品の大量発生や品質低下、納期遅延のリスクが伴います。製造拠点を他国へ移した一回目の納品が、日本市場では販売に耐えうることができない不良品だらけだったというのはよく聞かれる話です。

またそれに加え、夢展望は創業時から中国工場での企画製造管理を行い、品質向上のための生産管理ノウハウを蓄積してきたため、せっかく貯めてきたノウハウを捨ててまで分散投資するチャイナ・プラスワンに踏み切れなかったのではないでしょうか。

EC専業アパレルに見る一極集中販売のリスク

夢展望社の原価高騰、3つ目の要因である、過剰在庫についてですが、この在庫リスクの問題はアパレルメーカーならばどの企業も毎シーズン対峙しなければいけない大きな課題です。企業成長のための「適正量」の在庫投資は、毎シーズントレンドが移り変わるアパレル業界では非常に難しく、また経営手腕が求められる領域でもあります。

夢展望が在庫を抱えてしまった原因は主に以下の2つと言われています。

1.過剰なマルチブランド戦略

ギャル向けファッションマーケットの縮小に伴いマルチブランド戦略を実行し、8つの新ブランドを投入するが思うように売れなかった。

2.トレンド乖離による販売不振

ロングブーツなど同店舗のヒット商品をまだ売れると見通して大量に製造するが、トレンドの変化から販売が鈍った。

その結果、在庫商品の処分損失として150百万円を売上原価として計上し原価率を押し上げることに繋がりました。

 

しかし、この2つの「作ったけど売れなかった」という話は決して夢展望に限ったものではなく、多くのアパレル企業に共通する問題です。

本当に重要なのは、「販売チャネルの数に対して、在庫量が適正だったのか?」という点です。

 

夢展望の販路は、直販展開のみで卸は行っていません。楽天市場店や本店をはじめオンライン販売は4サイト、実店舗は14年12月時点で2店舗で、それも期間限定の展開で、販路が多いとは言えない状況でした。数少ない直販店舗で売り切らなければいけないので、マーケティングが外れると、消化不良在庫になるリスクは高くなります。仮に卸先としてZOZO TOWNなどのモールや日本各地の専門店などの販売チャネルを複数持っていたとすれば、在庫消化の可能性がそれだけ広がるため、150百万円も処分損失計上する事態になるまで在庫を抱えることがなかったのではと思います。

では、夢展望がなぜそこまでの在庫を作ってしまったのかというと、以下のことが考えられます。

  1. 自社企画・生産のOEMにこだわっており、ODM商材に価格で勝つために大量発注する必要があった
  2. ブームに支えられていたので在庫を縦に積んで売れていた

つまり、1商品あたりの在庫を深く積み、かつ競合よりも安く提供するのでマーケティングが当たればリターンも大きいですが、外せばリスクが大きくなるのです。

一方で、夢展望と似た低価格帯ギャル向けアパレルで調子の良いGALSTAR(http://www.galstar.jp/)は、ODM仕入れをうまく取り入れ在庫量を適正化することでリスク分散しています。

OEMは発注する企業が商品の企画を行い、製造仕様書を発行し、サンプルチェックも自己責任で行い、生産まで行うモデル。ODMは商品企画を工場側に任せ、製品の形になった提案サンプルを見て、買うか買わないか(生産するかしないか)を決めるモデルです。

ODMは、工場側が企画した商品のため、OEM商品と比べ仕入れ価格はやや割高になりますが、その反面、必要最低限の数量を発注できるメリットがあります。この生産方法を採用しているのがForever21で、バリエーションが豊富であることが売れるポイントとなっています。この成功から、売れなかった際のリスクを分散できるODMに多くのアパレル業者が切り替えています。

OEM生産は垂直統合で企画から生産まで管理できるため、原価管理をしっかり行えば製造コストを抑えて大量に商品を製造できます。ユニクロのようにトレンド変化の影響をあまり受けず、定番の商品が売れるブランドであれば価格優位性を保てるためとても有効な手段となります。

また、大量に発注した商品であっても店舗数が多ければ、在庫を捌くことはできますが、販路が少なければ売らなければならない一店舗あたりの数量が増えてしまうので、よほど売れる商品をマーケティングしないと厳しい結果となります。かつての夢展望は姫ギャルや小悪魔ブームに支えられていて、売れるマーケットだったので、在庫切れによる販売機会の喪失を防ぐため、SKU毎に在庫を積む「縦展開」を行っていました。

しかし、ギャルマーケット縮小とトレンドの変化によって鈍る売れ行きのもと、新たな顧客を創出する必要があった近年の夢展望においては、ODM生産でアイテム点数を増やした「横展開」により、在庫リスクを分散させながらマーケットを再構築させていくべきだったのではないかと思います。

夢展望は今回の第三者割当増資により調達する資金で、ブランドイメージ一新、マス広告への積極投資、TV通販・実店舗展開拡大、オムニチャネル戦略、コスト見直し、倉庫の適正化などを掲げ、安定した利益を獲得できる体制に変革すると宣言しています。末筆になりますが、夢展望さんの復活に期待したいと思います。

 

この記事を書いた人

KAZUO
KAZUO
EC TIMESの編集長です。
武蔵野美術大学卒業後、イタリア・フィレンツェに渡伊。製靴修行を経て、日本の某靴メーカーにて数々のリアル店舗、EC運営に携わった経験を持つ。